水なすとは?水なすってどんな茄子私達の水なすは泉州の、さらには日本の誇るナスまで登り詰めたのか、その歴史や由来・特徴、栽培方法、さらには食べ方などについてなす伝の知る範囲で書き記したいと思います。ご参考にして下さい。 |
ナスの生い立ち数千年の古い歴史を持つナスの生まれ故郷・原産地はインドの東部です。熱帯地帯であるインドで紀元前から栽培されていたナスは、やがて東ルートで東南アジアや中国、一方西ルートで中東や地中海沿岸を経てヨーロッパに伝わったと考えられています。中国に伝わったのは紀元前5世紀頃ですが、すでに6世紀頃の「斎民要術」になすの栽培などに関する記述があります。ヨーロッパに伝わったのはだいぶ遅く13世紀頃といわれています。日本にいつ渡来したのかはわかりませんが、少なくとも奈良時代には僧により中国から伝わり栽培が行われていたようです。東大寺正倉院文書には天平六年(734年)に「茄子」についての記載があり、平城京の遺構から発掘された木簡(736年〜)にも複数の記録が残っています。 日本各地に伝播したナスは、長い歴史を経てそれぞれの地域ごとに品種改良が進み、さまざまな品種に枝分かれしていきました。 |
代表的なナスの品種紹介日本で栽培されているナスは細かく分けると30〜40種類はありますが、その中でも代表的なナスを紹介します。 中長なす
多くの地域で栽培され、市場に最も多く流通している一般的なナスです。12〜15cmくらいの長卵形で、皮は濃紫色。 丸なす
コロッとした丸いなすで、大きさは野球やソフトボールくらいの愛嬌のあるまん丸とした形が特徴です。 小なす
5〜8cmくらいの小さく収獲されるナスの総称で、「丸形」と「卵形」があります。重さは10〜20g程度です。 米なす
アメリカの大型の品種を日本で改良したと言われる大型のなすです。一般的なナスが120〜150g程度なのに対し、米ナスは300〜400gくらいあります。 水なす
大阪府南部の泉州地方の特産としてあまりにも有名で、皮が薄く、絞ると水分がしたたるほどみずみずしく、灰汁(アク)も少なくほのかに甘味もあります。 長なす
20cm以上の長いなすですが、栽培される地域によって様々な長さがあります。皮は分厚く少し硬めですが、果肉は程よい繊維質でやわらかく、焼きなすや田楽、炒め物、煮物などいろんな料理に適しています。 白なす 皮の色が白いなすで、アントシアニン色素や葉緑素がないため完熟しても果皮が紫色になりません。 普通のナスに比べて皮が硬く、食感もしっかりしています。また長時間煮込んでも煮崩れしにくく変色もしません、このため炒め物や揚げ物に向いています。 なお、各地に昔からの在来種があり淡緑色のものを白なすと呼んでいる地域もあります。 青なす
別名「緑なす」「翡翠(ひすい)なす」ともいわれている皮が薄緑色?緑色のナスです。地域によっては「白なす」と呼ばれることもあります。 |
伝統野菜としての品種
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水なすの歴史前述した室町時代の教科書である「庭訓往来」には、澤茄子に「みつなす」の読みを振ってあります。このことから地元では、和泉国日根郡澤村(現・貝塚市沢町)が泉州水ナス発祥の地という説が有力視されています。一方、大阪府や地元泉佐野市の運営するホームページでは、日根郡上之郷村(現・泉佐野市上之郷)近辺を発祥の地として紹介しています。「日根野あずきに上之郷なす」のことわざから、泉佐野市上之郷近辺を発祥の地とする説です。 水なすは畑の隅に植えられ農作業中の熱中症防止の目的で生食されたほか、長く漬け込んだ古漬けを塩出しして、これを大阪湾で水揚げされるものの市場に出ない安価な小エビ(じゃこ)と和えた「じゃこごうこ」などに調理して食べていました。この「じゃこごうこ」は、泉州の郷土料理の代表格として今でもいくつかの水ナス漬け業者が復活させて取り扱っています。 運送技術が進んだ昭和初期に販路拡大のためにデパートに並んだが、熟しても緑の斑が残り奇抜で、また非常に傷が付きやすく漬物にすると褐色に代わるという性質から見た目が悪く敬遠されました。当時は運送技術がまだまだ発達していないことも影響したようです。現在広く流通しているのは、戦後開発された本来の水茄子よりやや細長く全体が紫になる絹茄子と呼ばれる系統のものです。 その後、外見を良くする品種改良だけではなく、早期出荷を目的に水なすをハウス栽培を行ったり、加温栽培する生産農家も現れたことから、現在はほぼ一年中出回ることとなりました。
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水なすの原種といわれているナス
水なすの発祥の地にはあらゆる説があり、地元の栽培農家や漬物業者の間でも、今でも真相は分かっていません。また水なすにも多くの品種があり、泉州地域でも地区によって栽培品種が異なります。【澤なす】 なす伝で水なすを製造する当方も現物を見たことはないのですが、大阪府貝塚市の澤地区で栽培されていた「澤なす」は 水なすの原種の一つとされています。現在は数えるほどの農家さんが自家採種により栽培されているとのことなので、途絶えてはいないようです。 庭訓往来に「沢茄子」の文字が存在しています。 【馬場なす】 大阪府貝塚市馬場地区と言う狭い地域の中だけで、現在でも数件の農家により自家採種により少量栽培されているのが「馬場なす」です。水なすの原種といわれているナスの一つで、その種は頑なに門外不出が守られています。そのようなことから「幻の水なす」とも呼ばれています。 【上之郷なす】 大阪府や地元泉佐野市のホームページにも紹介されており、大阪府泉佐野市上之郷地区で栽培されていたとされる水なすの原種の一つです。 【樽井巾着なす】 大阪府泉南市樽井町(タルイチョウ)でひっそりと種が繋がれ栽培されていた巾着なすです。形状はその名の通り巾着型です。こちらも水なすの原種の一つではないかといわれています。
現代のように種苗商が無い時代ですので、農家はそれぞれ自家採種で次の年の 【大手種苗会社より新品種】 近年は泉州水なすが全国的に受け入れていただけるようになり、大阪泉州より全国へ一大食文化が広まりつつあるのは、我々水なすの生産販売に携わるものにとってこのうえない喜びです。
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地域野菜の高級ブランド化
泉州の水なすは、昭和30年代まで、地域の人々にとって安価な食材であり、質より量に重点を置いて栽培されていました。当時、水なすはその劣化しやすく鮮度がすぐ落ちると言った性質上、他地域へ出回ることがなく、地元の泉州地域で消費されるだけでした。 1988年ににクロネコヤマトのクール宅急便が誕生し全国展開されるに際し、貝塚市のお漬物屋さんである北由食品鰍ウんが、水なすを浅漬けとして全国発送されはじめました。このことを発端に、水なす漬けは全国各地の消費者に食されることになり、これまで泉州地域の人々には気づかれなかった商品価値を「発見」されました。 |
水なすは何故泉州地域でしか採れないのか
泉州水なすは、浅漬け用途で全国に知られるようになり需要が急激に増えました。収益率も高いため、岸和田市、貝塚市、泉佐野市、和泉市等で栽培農家が増え、後継者も多く育っています。 まず、その独自の土地性が挙げられます。 そもそも水なすは、乾燥した土地では栽培できない農作物です。泉州地域には、水なすを栽培するために絶対必要な水瓶であるため池が、全国でも1〜2を争うくらいに数多く点在しています。かっては米作りに優先的に使われた水も、近年は都市化による減反の影響で、水なす作りにも自由に回してもらえる地域が増えました。そのため、水なす栽培に必要な量の水を安定して十分に使えるようになりました。 大阪府最大の溜池・岸和田市の久米田池の淵を走るだんじり 土壌の違いも大きな原因とされています。 水なすの主な栽培地のうち岸和田市、貝塚市、泉佐野市などの地質は大阪湾に面する砂地質で水はけがよく、海が近いため地下水にも程よく塩分が混じり、強い根を張る水なすにとって育ちやすい良好な環境になります。
ナスの中でも栽培が極めて難しいとされる、水なすの栽培技術も勿論要因の一つと考えられます。 生産している農家では、水なすの栽培技術を表に出すことがなかったため、他地域に栽培技術が伝わらなかったことも原因のひとつなのでしょう。 |
全国へも取り組みの動き。しかし・・・
高知県や徳島県など四国は現在でもナスの一大産地なのですが、遠く江戸時代の参勤交代でもナスにまつわる昔話があります。 これ程の知名度、人気のある水なすですから、現在でも全国で似た気候で栽培する取り組みがありますが、実際には育ちにくい状況です。また、育っても1年だけだったり、形や見た目は変わらない水なすが栽培されても、漬け込んだ時の瑞々しさや味などは、泉州の水なすと同じようにはいかないようです。泉州が生んだ水なすは、これからも泉州の地のみで生み出されていくのでしょう、と言うのが私の意見です。
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水なすの栽培方法
より詳しくは、当HPの水なすの栽培方法についてをご参照下さい。
○ビニールハウス(加温)栽培での出荷はだいたい前年の11月頃〜6月頃です。 ビニールハウス(無加温)栽培の割合が最も多く、次いで露地栽培で、ビニールハウス(加温)栽培の順です。ビニールハウス加温栽培の全体の割合は5%未満に過ぎません。 露地栽培はハウス栽培に比べ、雨風などの影響を受けどうしても葉が実に触れるのでキズがつきやすいです。ナス紺色が濃く、種が多く、また皮がやや厚いのが特徴です。ただし露地物はハウス物に比べると、やや甘味に勝ると言う方もいらっしゃいます。 収穫したばかりの水ナスはトゲが立っていて慣れた私たちでも指に刺さります。
意外と暑さにも弱い水なす
熱帯地方原産の野菜だけに、水なすは寒さに非常に弱いです。逆に夏場の暑さも限度を超えると、水なすも弱ってしまいます。水なすは、意外と暑さにも弱いのです。水なすのお漬物がお中元などで需要が集中する7、8月は、水なす出荷の最盛期であり、一日の収穫量はそれまでと比べ数倍になります。その頃のビニールハウス内の温度は40℃を超えることも珍しくありません。湿度も高く、体を使う作業なので体感温度はゆうに50℃近くはあるでしょう。水なすの栽培は健康で体力に自信がある方でないと勤まりません。
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水なすの選別は厳しい
出荷時には形、艶、重量(水分)などを見て品質のランクが分けられます。実際にはA級、B級、C級、D級、規格外の5種類に細かく選別していきます。選別した中から質・見た目の良いA級品と、見た目が少し劣るB級品の一部が主に漬物屋さんへ出荷されます。 一般的には傷が付いたり形の悪いものはランクが低いのですが、ポリフェノールなどの栄養価は傷が付いた水なすの方が高いことが分かってきています。そのため、最近はC級品以下の水なすも以前に比べると商品価値が見直されつつあります。 水なすの選別風景:JAいずみの様の資料より 泉州水なすは浅漬けが絶品
一般的には泉州水なす=浅漬けのイメージが強く、糠に1日〜3日くらい漬けてサラダ感覚の漬物としても食べられています。全国的にも漬けてから少しずつ糠の中で味が変化するのは珍しく、漬かり具合は食べる人の好みによってかなり異なります。泉州水なすは、浅漬けが絶品です。 とりわけ糠漬けにすることでより甘みとジューシーさが増し、ナス嫌いの人でさえ唸るほどの美味しさを味わえます。なす伝でも保存料・調味料は一切使用せず、水なす本来の甘み・瑞々しさを生かした水なす糠漬けを製造販売しております。 糠床へ3ヶ月から最長1年間ほど漬け込み、熟成発酵した水なす漬物もあり、泉州地域ではこれを「水なすの古漬け」といいます。泉州地域では昔は各家庭で作っていましたが、現在では自家用に作る家庭も少なくなり、若い人達は「水なすの古漬け」をほとんど知らないようです。 |
水なすの泉州郷土料理「じゃこごうこ」
泉州水なすの知られざる郷土料理としての存在感。その代表的な食べ方の一つとして「じゃこごうこ」があります。 水なす漬物を古漬けにし、大阪湾で獲れる小エビを生姜と一緒に甘辛く佃煮風に炊き合した料理です。名前の由来は海老じゃこと、水なすのお漬物(香の物=こうこう=ごうこ)を合わせて「じゃこごうこ」となりました。泉州地域では昔から、豊作で採れすぎた水なすは、冬の間の保存食を目的として糠床へ漬け込まれ、古漬けとして食べられていました。また、大阪湾で大量に獲れた海老じゃこと一緒に炊き合わせると非常に美味しく、お金もかからない料理だったことから、昔の泉州地域では生活の知恵としても親しまれてきました。このように昔はあたりまえに一般家庭にありましたが、各家庭、泉州地方の中でも各地域によってまったく味が違うという特徴もあります。そこがまた郷土料理として粋なところです。 なす伝では、このじゃこごうこは勿論、海老を同じく大阪湾の特産物である穴子やタコで炊き出しした「穴子ごうこ」、「たこごうこ」も製造販売しておりますので、是非一度ご賞味下さい。ちなみに、なす伝の代表・店長である吉川泰正が居住し、なす伝の製造所・店舗がある貝塚市の寺内町・願泉寺(がんせんじ)周辺地域ではじゃこごうこの別名として「じゃこなす」とも呼ばれています。となればなす伝のオリジナル商品も「穴子なす」や「たこなす」と呼ぶほうが相応しいかもしれません。
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色々なレシピに使える水なすナスの中でも、生で食べられ美味しいのが水なすです。全国的にもこれだけ生食が広く認知されているナスは珍しいです。 他のナスよりも皮が薄くて水分が多いから、煮たり油で揚げたりすると、頼りなくトロけてしまいそうだと思われがちですが、実は和洋中すべての料理に水なすを使えます。油と相性が良いのはもちろん、焼きナスから煮物、天ぷら、さらにマーボー茄子などでも水なす の味と食感が生かされます。
水なすの選び方(見分け方)
水ナスの保存方法生の水なすは、ナス自体が熱帯地方原産だけに冷気と乾燥が苦手です。なので新聞紙などに包んで涼しい冷暗所、または冷蔵庫の野菜室で保存します。室温の場合3日くらいは持ちますが、気温の高い時期や少し長めに保存したいときは冷蔵保存のほうがよいでしょう。冷蔵する場合は、新聞紙で包んでポリ袋に入れて野菜室へ。ただし冷やしすぎるとかたくなり味が落ちるのでなるべく早く食べましょう。 水なす漬けは、例えばなす伝特製水なす糠漬けの場合は、全て個別袋入りのため冷蔵庫での保管やお裾分けにとても便利です。商品の到着後は、冷蔵庫の出来れば野菜室にお入れ下さい。水なす糠漬けの保管は5〜12度、より望ましくは8〜10度が適しています。真夏の作物である水なすは、例え浅漬けであっても5度未満では急速に鮮度が落ちます。
水ナスの栄養と期待される効能なすは一般的に9割以上は水分と糖分で構成されています。水なすも同様に殆どが水分と糖分で構成されています。ですから水なすには栄養が無いのではないかと言われそうですが、そうでもないのです。 水なすの皮にはアントシアン系色素である「ナスニン」というポリフェノールの一種が含まれています。ナスニンには抗酸化作用があり、美容や老化防止に結構大きく作用すると言われています。また眼精疲労にも効果があると言われています。そのため、水なすを調理するときは是非皮ごと使いましょう。カリウムも比較的多く含まれています。カリウムは血圧の上昇を抑える作用があるので、生活習慣病の予防にも効果が期待できます。
なすの含まれることわざ
このことわざには3つの意味があるとされています。まず秋ナスは特に味が良いので、もったいないから嫁には食べさせるなという、姑の嫁いびり言葉。次に、ナスには体を冷やす効能があるので、涼しくなる秋にお嫁さんが体調を崩さないように、という意味。更には、なすは種が少ないので子供が出来ないといけないから嫁には食べさせるなと、気遣いのため使った言葉です。 「一富士二鷹三なすび」 (いちふじにたかさんなすび) このことわざは、初夢に見ると縁起がいいと言われています。その訳は、は富士山は日本一の山。鷹は「高い」「掴み取る」。ナスは実に成る事から「事を成す」「子孫繁栄」や「成功する」という意味だそうです。また、徳川家康が富士山、鷹狩り、初物のナスを好んだ、ことからなど諸説ありますが、いずれにしても良い意味で使われていることに間違いはなさそうです。 「親の意見と茄子の花は千に一つも徒はない」 (おやのいけんとなすびのはなはせんにひとつもあだはない) ナスは水や肥料を比較的たくさん必要とするなど、育てるのには大変苦労するのですが,花が咲くまできちんと育てると一つの無駄花もなく実が成ります(結実率が高い)。一方、 親が子にする意見も同じように子にとって無駄な意見はなく、しかも間違いもないという見解です。「徒」は無駄という意味で,親の小言は良く聞くようにという意味だと思います。ちなみに、茄子という名前の由来は「早く実が成る」ことからだそうです 「瓜の蔓に茄子はならぬ」(うりのつるになすびはならぬ) 血筋は争うことができず、平凡な親からは非凡な優れた子は生まれないということの喩えです。さらにそれから転じて、ある事柄からはそれ相応の結果しか生まれないということのようです。 類義のことわざとして、「蛙の子は蛙」(かえるのこはかえる)、「へちまの種は大根にならぬ」(へちまのたねはだいこんにならぬ) などがあります。一方、対義のことわざとして、「鳶が鷹を生む」(とびがたかをうむ)
というのがあります。 用例としては、俺の息子は『瓜の蔓に茄子はならぬ』で、「俺と同じ大工の職人の道を進むことになったが、なかなか覚えが早くて職人としての筋が良いようには思う」といった使い方があるようです。 |